画像処理では一般に取り扱う情報量が膨大であるため、システム構築においてハードウェア/ソフトウェアを組み合わせたシステム全体としての最適化が必要不可欠です。本グループでは、動画像の符号化/復号化や品質向上手法を中心とした画像処理を対象に、アリゴリズムおよびその実装に関する検討を相補的に行うことにより、画像処理システムの構成手法に関する研究を行っています。
ワンセグ放送受信端末の普及やインターネット上の動画像配信サービスの活性化により、携帯電話や音楽プレイヤなどの携帯端末上で動画像を視聴する機会が増加しています。しかし、携帯端末向け動画像コンテンツの流通量が増加すると、多数の動画像の中から所望の動画像を見つけ出す作業が煩わしいものとなってしまいます。多数の動画像の中から見たい動画像を直感的に見つけ出すためには、複数動画像の一覧表示が有効ですが、複数の動画像を同時並列に復号する必要があるため、計算機リソースや消費電力の制約が大きい携帯端末での実現は困難なものとなっています。また、携帯端末のディスプレイの高解像度化により、携帯端末上でハイビジョン放送などの高解像度動画像を視聴したいと言う要求も高まっていますが、同様の理由から難しいものとなっています。
本研究では、計算機リソースや消費電力の制約が大きい携帯端末上で多数の動画像の並列復号や高解像度動画像の復号を実現するため、動画像復号器の性能最適化技術、復号処理の高速化技術の研究を行っています。
近年、液晶ディスプレイの高品質化に伴い、動画像の高品質化への要求が高まっています。高品質化のアプローチとしては空間解像度および時間解像度の向上があります。そのうち、本研究では時間解像度の向上を目指した研究を行っています。時間解像度向上技術の1つである動き補償フレーム補間では、一般的にブロック単位で処理が行われるため、ブロックノイズが発生します。そこで、本研究では、物体追跡等で用いられる特徴点追跡手法を用いた動き補償フレーム補間手法に関する研究を行います。提案手法では特徴点毎にその追跡により動きベクトルを算出し、それに基づき画素単位の補間により補間フレームを生成するため、ブロックノイズを発生しない綺麗な補間が実現できます。
近年、デジタルカメラや液晶ディスプレイなどが普及し、画像をデジタル機器を通して扱うことが増えてきています。これらの機器では一般に画像をデジタル処理で補正します。この画像補正処理の1つとして、明るさ(輝度)、コントラストを補正する階調補正処理があります。従来の階調補正処理にはガンマ補正やヒストグラム平滑化等がありますが、これらの補正では画素の輝度値のみによって補正後の輝度値が一意に決定されます。それに対し適応的輝度補正では、周辺の画素の情報も利用して適応的に補正係数を決定し補正を行います。そのため画像内の領域毎にその内容に応じて適切な補正が可能です。しかし、適応的階調補正は、補正する画素の周辺画素の情報を使用し、最適な補正係数を決定するため、従来の補正処理と比較して処理量が大きくなります。そこで本研究では、このような適応的階調補正に関して、動画像をリアルタイムに階調補正可能なハードウェアアーキテクチャを検討するとともに、ハードウェア実装に適した更なる画質向上手法の検討を行います。より具体的には Retinex 理論に基づく QP (2次計画法) モデルを用いた適応的階調補正に関する研究を行っています。
地上デジタル放送やデジタルビデオカメラの映像方式として利用されているインタレース動画像は、現在普及が進んでいる液晶ディスプレイでは正常に表示できないため、インタレース動画像をプログレッシブ動画像に変換する処理が必要になります。この処理は、デインタレース処理 (IP 変換) と呼ばれ、高級な液晶ディスプレイでは組込みシステムとして実装されリアルタイム処理されています。デインタレース処理は画質に大きな影響を与えるため、さまざまな手法が研究されています。現在主流となっている手法は、高い補間精度をもつものの、演算量が大きく、ハードウェア化の際のコストも高くなっています。そこで本研究では、ハードウェアによるデインタレース処理の低コスト化、及び、更なる高画質化を目指して研究を進めています。
近年、地上デジタル放送や Blu-ray Disc などの高解像度画像を扱う放送やメディアの普及により、プラズマテレビや液晶テレビなどの大型表示デバイスに注目が集まっています。しかし、画像の高画質化に伴いデータサイズが増加しており、画像データを格納するために映像機器では大容量のフレームメモリが必要となっています。そのことにより、外付けメモリの増加によるコストアップや消費電力増加などの問題が起きています。そこで本研究では、画像処理LSIとフレームメモリの間に圧縮・伸張回路を入れることで、フレームメモリの容量を削減することを目的としています。
デジタルビデオカメラで撮影された動画像には、さまざまなノイズが混入しており、高機能化に伴う内部での信号処理の増加によって、さらにノイズが混入・変性してしまいます。現在のデジタルビデオカメラ開発では、試作機を製作しノイズ評価用の動画像を撮影し、その動画像を専門技術者が見ることで、主観的にノイズ評価を行っています。しかし、この方法では、開発工程での工数・コストが莫大になってしまいます。したがって、デジタルビデオカメラ開発における期間短縮や製造コストの削減のために、ノイズ評価方法の確立及び自動化を行うことが不可欠であると考えられます。本研究では、動画像におけるノイズ評価手法の確立並びに自動化を可能にするシステムの構築を目指しています。