Overview

カーボンニュートラル社会における
次世代エネルギーマネジメントシステム


低炭素社会の実現や電力コストの削減などエネルギーに関する諸問題は世界的に注目されています。これらの問題の解決には、蓄電や電力変換などの要素技術だけではなく、システムレベル設計方法や機械学習を活用した、情報科学技術に基づくシステムの知的運用が必要不可欠です。

システムの構成要素の振る舞いを正しく理解するためのモデリング技術、発電量や電力価格などの未来の振る舞いを予測する技術、これらの情報から最適な解を導き、適切な意思決定を行う最適化技術、さらには社会実装に向け、エネルギーマネジメントシステムの有効性を実証する過程で重要な組込み技術など、研究分野は多岐に渡ります( 詳細はこちら )。

  • 蓄電池に対する等価回路のモデリング
  • 深層学習を用いた電力価格/需要予想
  • 太陽光発電予測に基づく蓄電池・需要の運用最適化
  • 深層学習を用いた非侵襲型熱負荷モニタリング
  • 蓄電池劣化を考慮したアグリゲーション技術
  • 快適性と省エネルギーを両立する空調の最適化と実証

スマートモビリティシステムの実現に向けた
Vehicle-to-Everything のデジタルツイン


現在、自動車産業界では自律走行や運転補助機能が次世代技術として注目され、多眼カメラ、全方位カメラ、レーダー(Radar)、ライダー(LiDAR)などの複数センサーから得られる情報を統合し、よりスマートなモビリティシステムの実現を目指しています。

特に、Vehicle-to-Everythingと呼ばれるV2Xの世界では、一台の車が認知する世界を、他車と共有することで、危険予測や最適な交通状況の実現などの様々な運転状況が実現できると考えています。本研究で構想するデジタルツインは、フィジカル空間で取得した情報をサイバー空間上で再構成し、サイバー空間を車両間で共有することで実現します。そのデジタルツイン空間は高いリアルタイム性・信頼性が要求されます。

  • ROS2を用いたリアルタイムV2X通信
  • デジタルツイン空間を利用したテレ・オペレーション技術
  • 分散型連合学習を用いた物体検出モデルの学習

メタバース空間や行動変容のための立体音響技術


音は古来より重要な情報伝達媒体として用いられてきました。現在においても、人と人、さらには、人と機械との間に介在する情報伝達ツールとして、音は我々の生活に必要不可欠な存在です。

近年では、メタバース空間上で現実と何ら遜色のないリアルな音場空間を提供する技術などに音響技術は幅広く応用されています。例えば、スピーカーから発せられた音に、音源位置や反射音を考慮することでより臨場感の得られる、立体音響技術が知られています。他にも、倍音やスペクトル周波数等の音色の構成要素に加えてリズムやメロディなどの音楽的要素を利用することで、様々な音の印象効果を実現でき、そこから直感的に想起される人の感情を利用し、行動変容の可能性を追求します。

  • 仮想空間における立体音像定位技術
  • 行動変容を促す音響効果とその評価基盤の構築

メディア処理向け圧縮センシング技術


昨今のメディア処理は機械学習の発展に伴って著しい進歩を遂げています。 Internet of Things (IoT) 社会では、様々な媒体を通じて情報の送受信が頻繁に行われ、通信量削減のためには情報の圧縮が重要です。圧縮は、例えばMP3やJPEGのように元情報に対して極力劣化なく情報を削減し、利用時に再構成するものと、センシングを一部省略することで情報を最小限に抑え、その限られた情報から再構成するものとに分かれ、特に後者を圧縮センシングと呼びます。

一般的な機械学習では、その過程で十分な情報を必要とします。一方、情報を圧縮する過程で重要な情報が欠落する場合があり、それを基に学習したモデルは、往々にしてその推論精度が劣化してしまいます。そこで、機械学習にとってあまり重要でない情報のみを適切に圧縮センシングできないか?という問題を我々は提起し、機械学習に特化した圧縮技術の研究開発に取り組んでいます。

  • 深層学習のための圧縮センシング技術
  • 圧縮センシング画像に特化した学習モデルの設計
オリジナル(左)と圧縮センシング画像(右)

分散型IoTシステムおよびエッジの設計技術


情報通信技術の進歩により Internet of Things (IoT) に関するさまざまな研究が行われています。クラウドとエッジの連携により多様なアプリケーションの実現が期待されています。しかし、従来のクラウド・エッジコンピューティングで想定されるクラウドへデータを送信するという性質上、プライバシーの漏洩が避けられません。そこで、分散型機械学習の枠組みとして、データをクラウドに集約せずに各エッジに分散した状態で機械学習を行う、連合学習と呼ばれる仕組みが台頭しています。学習が各エッジで行われる、この枠組みを活かすためには、各エッジは性能向上や低消費電力化はもちろんのこと、熱的管理やハードウェアセキュリティ攻撃対策なども同時に行う必要があります。

  • 連合学習におけるタスクのマッピング・スケジューリング
  • IoTデバイスのサーマル・マネジメント
  • ハードウェアセキュリティ攻撃耐性を高める技術

医療用画像解析のための画像処理技術


世界的に急激な高齢化に加え、多忙な医療人材は確保が年々になりつつあります。そのため、医療現場で働く人々の負担は益々増大しています。こうした背景から、様々な医療用途で画像処理を活用する研究が盛んに行われています。例えば尿沈渣画像から各細胞の検出・分類を行ったり、MRI画像から癌細胞を自動的に検出したりすることで、臨床検査技師の作業負担を低減する等の試みがあります。

本講座では、深層学習を活用した画像処理技術を用いることで、より少ない学習データで、あるいは、より高精度に等の医療現場の実要求に即した目的を設定し、その達成を目指しています。例えば、学習には画像にアノテーションする必要がありますが、これは大きな作業負担に繋がります。さらに、症例によっては十分な学習用データの蓄積が困難な場合があり、学習データ数に対してロバストな画像処理技術やデータ増強技術に対する需要は高いです。これらのみ限定されませんが、様々な画像処理技術を組み合わせることで、医療現場の負担軽減を実現します。

  • 医療用画像における種々の細胞検出
  • 細胞画像の学習データ増強
  • 細胞画像のクラスタリングとラベリング
オリジナル(左)と細胞の検出・分類結果(右)